イノセンスは性別を問わない【『私の少年』1巻・感想】
『私の少年』1巻(高野ひと深、双葉社・講談社)の感想を語ります。
スポーツメーカーに勤める30歳、多和田聡子は夜の公園で12歳の美しい少年、早見真修と出会う。
元恋人からの残酷な仕打ち、家族の高圧と無関心。
それぞれが抱える孤独に触れた二人は互いを必要なものと感じていきーー。
僕は〈不器用な男と無垢な少女〉という構図が好きです。そこにあるのは家族愛の方が好みですが、恋愛が絡んでもそれはそれで良いと思います。
『私の少年』はまさにこの構図を、性別を逆転して描いた作品です。
作者もあとがきで述べているように、いわゆる〈おねショタもの〉ということになります。もともとは少女とオジさんの物語を構想していたらしいのですが。
性別を逆転しても、この構図のすばらしさは変わることはありませんでした。
真修の無垢さ・無邪気さは、その美少年っぷりも相まって、もはや独特な色気すら醸し出しています。
聡子の不器用さも絶妙です。でもその一方で真修の身を優しく案じる姿には、頼りがいのある大人としての魅力がはっきりとあらわれています。
そして1巻最後の場面。自分に優しくしてくれるのはそれが「普通だから」かと真修が尋ねたときの、聡子が何気なく返した言葉はまさにクリティカルヒットでしょう。あれで真修の心は撃ち抜かれました。
なんとなくですが、あの答え方には女性らしい優雅さがあらわれている気がします。あれがもし男性だったら、内容が同じだとしても、もっと天邪鬼な反応を見せていたのではないでしょうか。
この先いろいろと困難が待ち受けているだろうと容易に想像できますが、ふたりの関係を素直に応援したいと思っているのは、僕だけではないでしょう。
一応女性向けの作品とされているようですが、男性にもかなり響くと思います。男性向けの〈おねショタもの〉とは違った良さがありますし、むしろこちらの方がドストライクという男性も多いでしょう。
続きの巻の感想も今後書く予定です。