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本とアニメを題材にしていろいろ語るブログです。

城平京・片瀬茶柴『虚構推理』1巻【祝・アニメ化】

城平京・片瀬茶柴『虚構推理』1巻(講談社)の感想です。

 

あらすじ

“怪異”の知恵の神になった少女・岩永琴子が一目惚れした相手・桜川九郎は、“怪異”にさえ怖れられる男だった!?

2人に降りかかる奇想天外な事件と、その恋の行方は――!?

驚愕の〔恋愛×伝奇×ミステリ〕始動!!

 

 

僕はアニメ『絶園のテンペスト』が好きだったのですが、城平京さんはその漫画の原作を手掛けた方です。城平さんは推理小説家であると同時に、漫画原作も多く手掛けています。本書『虚構推理』は、本格ミステリ大賞を受賞した小説『虚構推理 鋼人七瀬』(講談社)が後に漫画化されたものです。これらの材料だけでかなり惹かれました。

 

そしてやはり片瀬さんの絵が良いです。本屋でもすぐに目につきました。琴子がかわいいです。

 

僕が買った当時はたしか3巻ほどまで出ていて、面白くて一気に読みました。その後も新刊発売のたびに購入してきたのですが、ついに『虚構推理』のアニメ化が決まったのです。2020年1月から放送開始です。そろそろです。楽しみです。

 

アニメ化を記念して、『虚構推理』1巻からレビューしてみようと思いました。後の展開も今では知っていますが、あらためて1巻ずつ面白さを語りたいと思います。

 

 

まず『虚構推理』1巻では、まだ「推理」の要素が見当たりません。ただし前半にあいさつ代わりの軽い叙述トリックのような会話が登場します。

 

九郎が彼女と別れた経緯として、河童と出会った話をします。河童を見て、九郎の彼女だったサキさんは怯えました。続いて九郎はこう説明します。

 

九郎「そんなサキさんには目もくれず 恐怖に声を震わせて脱兎のごとく逃げ出したよ」

 

怯える彼女を見捨てる情けない男に思えます。実際、九郎もそう伝わるような言葉の選び方をしています。しかし琴子はこう問います。

 

琴子「主語をはっきりさせてください サキさんを置いて逃げたのはどちらです?」

 

逃げ出したのは河童を見た九郎ではなく、九郎を見た河童の方だったわけです。

 

こうした会話の妙も『虚構推理』の魅力であり、これから本作の推理要素が判明してくるともっと面白くなってきます。

 

1巻の見所になっているのはふたつです。

 

まず、琴子がかわいいです。琴子は人形のように小さくかわいらしい女の子ですが、一目惚れの相手である九郎が彼女と別れたと知ってすぐに告白したりするなど、かなりの積極性があります。

 

そして琴子について忘れていけないのは、彼女が〈神〉ということです。神になったとき彼女は右眼と左足を失っており、今は義眼と義足を身に着けています。一眼一足は神の特徴ですが、それだけにとどまらず、どこか神秘的な魅力を琴子に与えています。琴子のアグレッシブさによってその神秘性が崩れることもしばしばですが。

 

そして1巻の見所のもうひとつは〈怪異〉です。琴子は〈神〉だと言いましたが、彼女は怪異たちの〈知恵の神〉なのです。そして九郎も怪異と深く関わっています。

 

1巻では怪異との戦闘が主ですが、今後は怪異という存在についてどんどん掘り下げられていくことになります。西尾維新さんの『物語シリーズ』が好きな人は『虚構推理』もきっとハマると思います。

 

琴子のかわいさと怪異譚だけでも十分楽しめるでしょうが、1巻後半で本作の主要ストーリーである「鋼人七瀬」編が始まりました。続く2巻や3巻で、鋼人七瀬という都市伝説をめぐって『虚構推理』という題名の意味が判明していきます。『虚構推理』の盛り上がりはまだまだこれからです。

 

以上、『虚構推理』1巻の感想でした。続く巻も今後レビューしていくつもりです。