因果交流電燈

本とアニメを題材にしていろいろ語るブログです。

やっぱりループものは面白い 【ロクでなし魔術講師と禁忌教典 14巻】

日本の漫画・アニメ作品における「ループもの」の人気と影響力は周知のことでしょう。

 

ループは、ひとつの作品の根幹に位置づけられる場合と、シリーズ作品の中のワンポイントとして導入される場合があります。前者の代表は『ひぐらしのなく頃に』、『まどマギ』や『シュタインズ・ゲート』でしょう。後者は『涼宮ハルヒシリーズ』の「エンドレスエイト」が特に有名です。

 

そんな中、『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』(富士見ファンタジア文庫、作者・羊太郎、イラスト・三嶋くろね)シリーズの14巻でついにループが扱われました。

 

『ロクでなし』は2017年にアニメ化もされた作品です。アニメ版しか見てない人は、「え、『ロクでなし』ってそんな作品だったっけ?」と思う人もいるかもしれません。

 

アニメは原作の5巻までが扱われましたが、実は原作6巻から物語の規模が広がりました(作者によれば、1巻~5巻が第1部、6巻~10巻が2部になります)。そのぶん敵の強さも桁外れになったりしています。

 

『ロクでなし』は毎巻、読者が読みたい(あるいは作者が書きたい?)要素をいろんな展開で料理してくれています。僕としては、特にイヴが再登場した11巻の話が大好きです(今度あらためて取り上げるかもしれません)。

 

そして14巻では、魔術祭典への帝国代表選手の選抜会を舞台に、ヒロインのひとりであるシスティーナの成長に焦点が当てられています。これまでもシスティーナの成長っぷりはことあるごとに描かれてきましたが、今回は学生たちとあらためて比較されることでシスティーナの異常な強さが強調されることになりました。

 

学生たちの競い合いという点では、アニメ化もされた2巻に近いところがあります。また、学生たちの争いの裏に潜む陰謀にグレンが挑むという展開も似ています。

 

14巻を新鮮なものにしているのがループという要素です。グレンたちは選抜会が行われる1週間に閉じ込められ、その1週間を何度も繰り返します。その回数は5000回以上。とあるきっかけからグレンはループに気付きますが、そこからの脱出にとてつもなく苦戦します。

 

ある意味、シリーズ全体を通じて最もグレンが苦しんだ回と言えるかもしれません。なぜなら、グレンはあっさり死ぬからです。それも何度も。グレンの死に対するシスティーナ、ルミア、イヴたちの反応など、読者的に見応えある場面もありますが、グレンにとっては辛さしかありません。次第に彼は精神的にもやられていきます。

 

そしてループの理由やそこからの脱出においても、やはり重要になってくるのがシスティーナの成長と強さに他なりません。このところセリカやアルベルトなどのヒロイン(?)を主軸とした話が続いたため、14巻で久しぶりにシスティーナが中心になりましたが、グレンのシスティーナへの思いがいろいろと変化した貴重な巻となりました。他にも重要人物の登場やいくつかの伏線などもあり、今後の物語の大きな展開にとっての準備回としても盛りだくさんだと言えるでしょう。

 

『ロクでなし』14巻で久々にループものに触れてみて、あらためてその面白さを感じました。ひとつひとつ手がかりを集めて、ルールや真相を明らかにしていくプロセス自体に一番の面白さがある気がします。非日常に投げ込まれた際の作戦会議や推理などの段階が、ループによって結末段階まで広げられると同時に、些細な行動までもが重大な要因になりうるため試行錯誤が必要になるという深みが与えられるわけです。

 

今度あらためてループものを深く扱ってみたいと思います。